ハートちゃんがばかくんにころされた

夕食が終わったあとお絵描きをはじめたいちごとみるく。
何枚も何枚も絵を描いて重ねてはテープでとめる。
最後に端をホチキスでとめて製本。
絵本のできあがりである。
いちごもみるくも自分で描いた絵を本の形にするのが気に入っているらしくいつも楽しそうに製本作業をしている。
みるくがつくった絵本にはみるくの似顔絵と手形などが描かれていた。
いちごがつくった絵本はひとつのストーリーになっていた。
表紙にタイトルもついている。
衝撃のタイトルは「ハートちゃんが ばかくんに ころされた」である。
このタイトルはいったい・・・
ちなみにハートちゃんというのはいちごがよく絵に描くハート型のキャラクターである。
ストーリーは「ちょうちゃん」の家に遊びに行こうとした「ハートちゃん」がいきなり「ばかくん」にナイフで刺されるところからはじまる。
救急車と消防車で病院に運ばれたハートちゃんは完治して元気に退院。
そしてちょうちゃんの家に歩いていきお菓子をたくさんもらって家に帰るという話であった。
最後にあとがきまでついていた。
「いちごがつくった本を見て(くれて)ありがとうございました。おわり。」
見事なできばえではあるがなぜハートちゃんはばかくんに刺されてしまうのか。
いちごに聞いてみたところ「だってばかくんは悪い人なの」と簡潔な返事が返ってきた。
そうか。
確かに世の中には悪い人もいる。
しかしそのストーリーはいかがなものか。
「だってね。ばかくんのお父さんとお母さんも悪い人なの。毎日ばかくんが悪い人になるようにって言ってたの。」
なにげなく言われたその言葉に考えさせられてしまった。
いちごが言う通り、子供は親が望む方向に伸びていく。
ばかだと言って育てたらきっとその子供は勉強する意欲をなくすだろう。
何度も親からくりかえし言われた言葉は子供の心に降り積もる。
それが激励の言葉なら勇気のもとになり、それが侮蔑の言葉なら呪縛となって子供をしばるだろう。
つい毎日なにかしら子供を叱ってしまいがちな自分自身を振り返る。
子供を認めて一人の人間として尊重してむきあう。
当たり前だけどとても大切で時に難しいこと。
それをいちごに教えられた気がした。