記憶書き換えの瞬間(いちご中3・みるく中1)

人の記憶というものは意外と簡単に書き換えられてしまうものである。
今日はその瞬間を見た。
先日、電子辞書(に入れてある充電池)の電池がきれたといちごがぶつぶつ言っていたので、中の電池をはずして充電するよう伝えた。
入れ替え用の単四充電池が見つからなかったからだ。
その後いちごは充電したまま電池のことを忘れているようだったので、私がコンセントからはずしてテーブルの上に置いておいた。
そしてその電池をいつのまにかみるくが電子辞書に入れておいてくれたらしい。
宿題をしていたいちごは電子辞書で調べものをしようとして、あれ?という顔をした。
そして「電子辞書・・・あれ?電池・・・ あ、替えたんだった」と、自分を納得させるようにうなずいた。
この時いちごの脳内では

「あれ?電子辞書の電池は充電しておいたはず」

「そのあと電池どうしたっけ?」

「覚えてないけどこの電子辞書には電池が入っている」

「たぶん自分で電池を交換したんだろう」

というような自問自答があったに違いない。
記憶と現実で異なる部分をすりあわせてつじつまをあわせたのだ。
次の瞬間、横にいたみるくが「僕が替えたよ!」と不満の声をあげた。
いちごははっと気づいたように「え?あ!いちごは電池抜いただけだった」とつぶやいた。
正しい記憶が戻ってきたようだ。
ほんの数秒のことだったが、実に興味深くおもしろいやりとりであった。